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心臓MRIについてのご説明

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当院は開設以来、循環器専門医のみならず、一般のクリニックの先生からも心臓 MRI 検査の依頼を頂き、のべ 3800 件の心臓 MRI 検査を施行してきました。心臓 MRI 検査は撮像が難しく高い技術を要しますが、当院では専属の放射線技師が検査を行っています。また、循環器専門医が検査に立ち会い、報告書を作成しています。

心臓MRI 検査には冠動脈評価を行う冠動脈 MRA、心機能評価を行うシネ MRI、心筋梗塞や心筋の線維化を検出する遅延造影 MRI などの撮像法があります。それぞれの撮像法で何が評価できるかを説明いたします。

1. 冠動脈 MRA

Whole heart coronary MRA と呼ばれる冠動脈 3 次元撮影法の開発、臨床応用に伴い、冠動脈 MRA の診断能は以前と比較し格段に向上しました(図 1)。空間分解能や撮影に要する時間は冠動脈 CT に劣るものの、造影剤・放射線被ばくを要しない、息止め不要、石灰化病変でも解析可能、などの利点があり、冠動脈狭窄のスクリーニング検査として注目されています。また、図 2 の様に川崎病症例では冠動脈瘤が非侵襲的に描出され、負担とリスクの大きなカテーテルによる冠動脈造影検査の回数を減らすことができます。

2. シネ MRI

骨や空気の影響を受けずに心臓全体を任意の方向で撮影できるという特徴を有し、図3 のような肥満や COPD 症例など心エコーで良好な画像を得にくい症例においても心形態、心機能を評価することが可能です。心筋と血液のコントラストは高く、鮮明な画像が得られ 心機能と壁運動のもっとも正確で再現性の高い検査法とされています(図 4)。図 5 は健常例、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)症例のシネ MRI、時間容積曲線を示したものです。心周期を 20 コマに分割し、各時相、すべての左室短軸像で心内膜面、心外膜面をトレースすることで左室時間容積曲線が作成できます。左室収縮能のみならず拡張能も同時に評価出来ます。
また、心エコーでは十分な描出が難しい心尖部の評価(図 6)や左室緻密化障害(図 7)、また心臓の全体像がつかみにくい疾患(図 8:心膜欠損症)の評価にも適しています。

3. T2 強調画像

冠動脈の閉塞により高度の虚血に陥った領域や梗塞部は細胞膜の機能障害から心筋浮腫を来たすことが知られています。浮腫に陥った領域は T2 強調画像で高信号に描出され(図 9)、この変化は 2~4 週間持続するとされています。従来、 T2強調画像は主に急性心筋梗塞と陳旧性心筋梗塞の鑑別(図 10)に用いられていましたが、T2 強調像で検出される心筋浮腫の範囲は責任冠動脈の支配領域(リスクエリア)を反映するため、後述する遅延造影 MRI で造影される梗塞エリアと比較することで、心筋救済を定量評価出来ます(図 11)。心筋救済率は再灌流時間や病変形態、各種薬物治療、血行再建法の影響を受け、心筋梗塞の重症度、治療効果判定の一つの指標として確立しています。

4. 遅延造影 MRI

ガドリニウム造影剤は細胞膜を通過しないため、投与して 10 分ほど経過すると血管内と心筋外液とで平衡状態を作ります。この時相で撮影する遅延造影 MRIは急性期から慢性期までの梗塞巣を高信号領域として描出し、これは病理学的梗塞領域と一致することが証明されています。
 急性冠症候群患者における遅延造影 MRI は心筋梗塞の存在(図 12、13)、広がり(梗塞サイズ:図 14)、バイアビリティー評価法(図 15)として用いられています。梗塞心筋が心内膜側から心外膜側へ進展すればするほど心筋のバイアビリティーは乏しい、すなわち慢性期の壁運動回復を認めにくいことが示されています。遅延造影 MRI は核医学よりも空間分解能に優れ、心内膜下梗塞はもちろん、右室や乳頭筋の梗塞も検出されます。

・微小循環障害(Microvascular obstruction:MVO)
 急性心筋梗塞において閉塞した冠動脈の血流を再開させても冠微小循環が障害されていると心筋組織レベルの血流が再開しないno-reflow現象が生じます。このような症例で遅延造影 MRI を施行すると造影剤が梗塞中心部に到達できないため、図16 のように梗塞の中心部が造影されず、梗塞の周辺部が遅延造影されるという特徴的なパターンを呈し、これは MVO と呼ばれ、機能予後不良因子であるとされています。

・心筋症における遅延造影
 遅延造影MRI は梗塞巣のみならず、線維化、肉芽腫など細胞外液分画/細胞内液分画の比が増加した組織を高信号で描出します。拡大心の鑑別疾患(図 17)として代表的なものとして虚血性心筋症、拡張型心筋症、心サルコイドーシスがあり、遅延造影 MRI が鑑別に有用です。虚血性心筋症では心内膜下または貫壁性の遅延パターンを呈しますが、拡張型心筋症では心筋は遅延造影されないか、斑状、あるいは心筋壁中間層が遅延造影されることが特徴とされています。心サルコイドーシスの造影パターンは様々で、冠動脈支配領域に一致しない分布を示します。心サルコイドーシスの診断基準では、ガドリニウム造影 MRI における心筋の遅延造影所見が副徴候の一つに新たに加えられています。
 また、肥大型心筋症において壁肥厚部が遅延造影される症例があり、線維化を反映すると考えられています。拡張機能、不整脈発症、予後との関連が報告されています。

5. 負荷パーフュージョン検査

ボーラス投与されたガドリニウム造影剤が心筋を通過する際、虚血心筋領域は血流が相対的に低下しているため、正常心筋と比べ低信号領域として描出されます。負荷法としてアデノシンが用いられます。MRI は核医学検査よりも空間分解能が高く、心内膜下虚血や多枝病変例でも良好に描出されると言われています。図 18 は、狭心症精査で負荷パーフュージョン検査を行い、左前下行枝領域の虚血を検出した症例です。

6. 血流計測

フェーズコントラスト法(非造影)を用いることで、エコーで検出難な部分も正確に血管の通過血液量を計測することが可能です。この方法を上行大動脈に適応(図 19)すると、僧帽弁逆流がない症例では収縮期の順行血液量が左室一回拍出量であり、拡張期の逆行性血液量が大動脈弁逆流量(ml)です。大動脈弁逆流量を収縮期の順行血液量で割ることで逆流率(%)が算出されます。僧帽弁閉鎖不全症では、シネ MRI で算出した左室一回拍出量とフェーズコントラスト法で求めた上行大動脈通過血液量の差が僧帽弁逆流量となります。シャント疾患においては、上行大動脈と肺動脈の通過血液量を計測することで Qp/Qsの計測が可能となります。また、心房中隔欠損症では欠損孔を通過する血液量を求めることも可能です。

7. 4D-TRAK MR Angiography

末梢静脈からガドリニウム造影剤を投与し、時間情報を有する画像として撮影する方法です。造影剤を要するという欠点はありますが、撮影時間は 40 秒と非常に短縮されています。冠静脈洞の拡大例で、左肘静脈から造影剤を投与し、左上大静脈遺残(PLSVC)が描出された症例を図 21 に示します。ペースメーカ ー植え込み前や先天性心疾患などの疾患で動脈、静脈の走行異常を検出するのに有用です。腎機能障害がある患者さんでは造影剤を用いない通常の血管撮影法を選択します。

以上、臨床の画像を中心に心臓 MRI 検査の現状を説明させて頂きました。心臓 MRI は呼吸を調整し心拍に合わせて撮影する検査法であり、呼吸調整が出来ない場合、また、不整脈が頻繁に起こる場合は撮影時間が長くなる場合や撮影が出来ないこともあります。
 とはいえ、心臓 MRI 検査は放射線被ばくを要さず、造影剤を使用しなくても検査を行うことが可能なことも多く、身体に負担の少ない検査です。
 一度の検査で多くの情報を得ることが出来る反面、検査法が多岐にわたるため検査選択が難しい場合もあります。ご相談頂ければ患者様毎に必要な検査をご提案いたします。平日午前は電話対応可能です。
 ぜひ、先生方の患者様に心臓 MRI 検査をお役立て頂ければ幸いです。